2010年12月号





*薬とたばこの関係*たばこ






2010年10月 たばこ税が大幅に値上がりしました。
これをうけて、禁煙に踏み切った方も多いのではないでしょうか?
今回は薬とタバコの関係について、いくつかご紹介いたします。


『知ってますか? 薬とタバコの相互作用』

薬の効果が、飲食物やアルコール等で影響を受けることは誰でも一度は耳にしたことがあると思います。
一方、薬はタバコの喫煙によっても影響を受けることをご存知ですか?
これは主に、タバコの煙による「薬物代謝酵素の誘導」と呼ばれる働きによるものです。
煙に含まれる成分が体内に入ると、肝臓のある種の酵素を活発にさせます。
そのため、この酵素の働きによって分解される薬は、活発化された酵素によって本来の効果持続時間よりも早く分解され、無効化されてしまいます。
つまり、タバコを吸わない人よりも、効き目が弱くなってしまうのです。
このタバコと薬の相互作用については、1日20本以上吸う人に頻繁に起こる傾向があると言われています。
しかも、これらの働きは、受動喫煙でも影響が出る。というデータがあります。

逆に言いますと、今までずっとタバコを吸っていた人が急にタバコを止めると、この薬物代謝酵素の働きが減少することで薬の分解が抑えられます。
その結果、
薬の効果が強くなりすぎてしまい、思わぬ副作用が出る可能性もあります。(全ての人に必ず出るわけではありません)
この場合は、薬の量を減らしたりといった変更をする必要があります。
宣言しても、失敗したら恥ずかしいから・・・等と思わずに、
持病をお持ちの方が禁煙をする際には、必ず医者に伝えてください。

患者と医者


喫煙によって効果が変化することがある主な薬は以下のようなものがあります。
(これらは一例です)

喘息剤:テオフィリン(商品名:テオドール、ユニフィル、スロービット等)
狭心症治療剤や血圧降下剤:プロプラノロール(商品名:インデラル等)
胃潰瘍薬:シメチジン(商品名:タガメット、カイロック)
鎮痛剤:ペンタゾシン(商品名:ペンタジン、ソセゴン)
向精神薬:クロルプロマジン(商品名:ウインタミン等)
     ジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン等)
糖尿病薬:インスリン

例えば、テオフィリンの場合、喫煙者は非喫煙者の1.5倍の量を服用しないと同じだけの効果が得られないといわれています。
また、喘息や胃腸障害にはタバコを吸う行為自体が有害となり、症状悪化につながります。
特に、35歳以上で1日15本以上タバコを吸う人が経口避妊薬(通称:ピル)を飲むと「心筋梗塞」や「脳梗塞」が起こる確率が高まると報告されています。そのため、これらの薬は
使用禁忌となっています。


 !!注意!!
禁煙を補助するための薬(※下記で詳しく説明します)である「ニコチンガム」や「ニコチンパッチ」には、『ニコチン』は入っていますが『薬物誘導代謝を活発にするその他の有害物質』は含まれていません。
その為、
これらを使用して禁煙した場合も、タバコを止めてしまったのと同様の効果が起こり、薬の作用が強く現れる可能性がありますので、ご注意ください!



『薬を使って上手に禁煙しましょう!』

☆ニコチン依存症について
タバコを止められない理由には、主に精神的依存と身体的依存があります。
精神的依存は「手持ち無沙汰、ないとなんとなく不安になる」というものです。
身体的依存は「やめるとイライラする、手が震える」といった身体的な症状が出ます。

タバコを吸うと、タバコに含まれているニコチンが肺から肺から血中に入り、すぐに脳に達します。
ニコチンが脳の受容体に結合すると、快感を生じさせる物質(ドパミン)が放出されます。ドパミンが放出されると快感が生じます。さらに、もう一度タバコを吸いたくなります。
ニコチンは、少量なら覚醒・興奮作用があります。
タバコを吸わないと集中できないとか、目覚めの一服という理由で吸う人がよくいるのはこのためです。また、量が多いと鎮静作用があるので、一服するとなんだか落ち着く感じがするのです。
こういった作用があるため、精神的にも身体的にもタバコが止められなくなってしまいます。
タバコをやめられないのは、意志の弱さではなく、ニコチンの持つ強い依存性が原因です。
このような喫煙習慣は「ニコチン依存症」といわれ、治療が必要な病気とされています。

タバコを止めると、ニコチンが体内に入らなくなることによって、
以下のような禁断症状といわれる状況になることがあります。
・気分が落ち込む
・食欲が増す
・イライラ・欲求不満・怒りのいずれかを感じる
・寝つきが悪い
・不安を感じる
・眠っても途中で目が覚める
・集中できない
これらの症状は、禁煙し始めは強く現れますが、次第に治まっていきます。

たばこ3
☆ワンポイントアドバイス☆
禁煙中、どうしてもタバコが吸いたくて仕方が無くなった時には、「冷たい水を飲む」「深呼吸する」「時計の秒針を1分間見つめる」など他の行動に置き換えて紛らわしましょう。


☆禁煙補助薬について
現在、日本で販売されている禁煙補助薬は、ニコチンを含んでいるものと含まないもの、大きく分けて2種類あります。

〜ニコチン代替療法〜
ガムやパッチの中にニコチンが含まれているものです。
そのため、禁煙中に下がる体内のニコチン量を少し補充して、ニコチンによる禁断症状を緩和するように働きます。
※海外では、吸入(鼻や口から吸って粘膜から吸収させる)タイプや、トローチのように舌の下に入れる薬などが出ています。
☆ニコチンのガム
・薬局、薬店、ドラッグストアで販売している指定第2類医薬品
・医師の処方せんがなくても購入できます。
・ニコチンを含んだガムで、口の粘膜からニコチンを吸収します。
1回の使用量は必ず1個とし、禁煙し始めは吸いたくなったときに我慢せずにかみ、次第に減らします。かみ方は普通のガムと異なりますので、十分に理解してから使用しましょう。
☆ニコチンパッチ
・ニコチンを含んだ皮膚に貼る薬です。
・ニコチンを皮膚から吸収させることにより、禁煙時のニコチン離脱状態を和らげ、禁煙を手助けすることを目的に開発された経皮吸収薬です。
1日1回、上腕やお腹、背中などに貼ります。皮膚のかぶれを防ぐため、毎日貼る場所を変えるとよいでしょう。
・薬局・薬店で購入するタイプと、医師に処方してもらうタイプがあります。


その他、ニコチンを含まない新しい禁煙の薬として、禁煙補助薬「チャンピックス錠」が注目されています。ここでは効果や副作用などについてご紹介します。
☆商品名:チャンピックス(有効成分名:バレニクリン酒石酸塩)
現在、日本で唯一採用されている口から飲むタイプの禁煙補助薬です。
ニコチン依存症の主な原因のひとつに考えられている4β2ニコチン受容体に対して強く結合し、脳内に分布するこの受容体に作用することによって、禁煙に伴う禁断症状やタバコに対する切望感を軽減すると同時に、受容体へのニコチンの結合を直接阻害することによって、喫煙しても満足感を得られにくくします。
つまり、ニコチンを含まない飲み薬は、イライラなどのニコチン切れによる症状を軽くするほか、タバコをおいしいと感じにくくする作用があるのです。
ニコチン代替療法と比較し、禁煙成功率が高いとのデータが出ています。

★薬の飲み方★
最初の3日間は1日1回から開始します。
飲み始めの1週間で徐々に服用量を増やしていきます。
4日目から1日2回、食後に飲みます。
飲み始めの1週間はタバコを吸いながら服用し、8日目には禁煙を開始します。
通常、服用期間は12週間です。
健康保険等を使った禁煙治療では、12週間で5回の診察を受けます。

★起こりやすい副作用:吐き気・強いかゆみや発疹などの皮膚症状・眠れなくなる・異常な夢を見る・頭痛・めまい・体がだるい・・・etc
その他、気になることや不調がありましたら、医師にご相談下さい。


☆禁煙治療と保険適応について

次のすべての条件を満たす方は、健康保険で処方を受けることができます。
[対象患者の4条件]
以下のすべての要件を満たす者であること
1.ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断されたものであること。
2.ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の者であること。
3.直ちに禁煙することを希望している患者であること。
4.「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意している者であること。

もちろん、これらの条件を満たさない患者様であっても、保険適用外(自由診療)で禁煙治療を受けることができます。

タバコ依存症スクリーニング表
TDS (Tabaco Dependence Screener)
  質問 はい
1点
いいえ
0点
1
自分が吸うつもりよりも、ずっと多くたばこを吸ってしまう事がありましたか?    
2
禁煙や本数を減らそうと試みてできなかった事がありましたか?    
3
禁煙したり、本数を減らそうとしたときに、たばこがほしくてたまらなくなる事がありましたか?    
4
禁煙したり、本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか?(イライラ・神経質・落ち着かない・集中しにくい・ゆううつ・頭痛・眠気・胃のむかつき・脈が遅い・手の震え・食欲又は体重増加)    
5
上の症状を消すために、またたばこを吸い始めた事がありましたか?    
6
重い病気にかかって、たばこはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?    
7
たばこのために健康問題が起こっているとわかっていても吸うことがありましたか?    
8
たばこのために精神的問題が起こっているとわかっていても吸うことがありましたか?    
9
自分はたばこに依存していると感じる事がありましたか?    
10
たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?    
  合計点

判定方法:10点満点のうち5点以上の場合、ICD-10診断によるタバコ依存症である可能性が高い(約80%)とされています。
5点以上にあてはまる場合は、ニコチン依存症の疑いがあります。
これを機に、お医者さんに相談してみては如何ですか?

堀ノ内病院では毎週火曜日の午後と土曜日の午前に禁煙外来を行っております。
(診療科・診察時間は変更になることがある為、詳しくはお問い合わせ下さい)


お大事にどうぞ。
たばこ4

文責:堀ノ内病院 薬剤師・一戸瑞紀
埼玉県新座市堀ノ内2-9-31
TEL:048-481-5168

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